鉄棒の歌

鉄棒に一回転の景色あり身体は影と切り離されて

虐げる人が居る家ならいっそ草原へ行こうキリンの背に乗り

                        歌集「キリンの子」より



 これは現代のお伽話であろうか。歌人鳥居(わけあって本名は公開してい
ないらしい)は、小学校5年の時、離婚した母の自死に会い天涯孤独となる。
その後養護施設に預けられたが、いじめや虐待を受け中学校では不登校
となり、それ以後は義務教育は殆んど受けていないようだ。、PTSDという
障害をかかえ、自殺未遂の経験もある。中学卒業後は働いて一人暮らしを
している。
  養護施設での楽しみは、辞書を引き引きながらの新聞を読むことだった
という。なかば独学で言葉を覚えた。文学との出会いも岡井隆(歌人)のその
新聞に載っていた文章であり、穂村弘や吉川宏志の歌集であったらしい。そ
の後吉川宏志の薦めもあり短歌を作り始め、2012年の全国短歌大会におい
て佳作に入選するまでになる。それにしても彼女と歌人達との出会いは、儚
くも美しい光景である。
 2016年2月初歌集「キリンの木」は歌集には珍しく重版を重ねているらしい。
歌集は幼い時の幸福な時代とその後の不遇な時代そしてそれ以外の歌にわ
かれる。とにかく言葉の力に圧倒される。以下は感動した歌をいくつか。



遮断機が上がれば既に友はなく見れば遠くに散った制服

孤児たちの墓場近くに建っていた魚のすり身加工工場

コロッケがこんがり揚がる夕暮れの母に呼ばれるまでのうたた寝

みんなまだ家族のままで砂浜に座って見つめる花火大会

噴水が止まれば水は空中に水の象を脱ぎ捨てて散る

昼顔の一輪ごとに閉じてゆく少年兵が見る母のゆめ

やがて街を去りゆく蒼き春雷がかたき卵の殻にひびけり

亡き祖父の庭に立ちいし柿の木のある日は夕焼け空に触れたり

                               歌集「キリンの子」より


人影のない滑り台
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誰もいない校庭の鉄棒
 
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